認知症

認知症

「認知症」とは、何らかの原因で脳の神経細胞が破壊・減少し、記憶したり判断したりする能力や認知機能の低下が起こることで、日常生活に支障をきたしている状態のことをいいます。
なお、認知症は病気の名前ではなく、医学的にはまだ診断が決められず、原因もはっきりしていない特有の症状や状態を表す「症候群」のことです。

従来、「認知症」は「痴呆症」と呼ばれていましたが、侮蔑的な表現が含まれているとして問題となり、2004年12月に厚生労働省の用語検討会において「認知症」という呼称に変更されました。

認知症にはいくつかの種類があり、発症の過程でその種類が分類されます。認知症のおよそ60%強が「アルツハイマー型認知症」です。次に多いのが「レビー小体型認知症」、その次に多いのが「血管性認知症」です。この3つのタイプの認知症が認知症全体の約85%を占めており、「三大認知症」と言われてます。

三大認知症

アルツハイマー型認知症
認知症のうち最も多いとされているのが「アルツハイマー型認知症」で、全体の60%以上ともいわれており、アルツハイマー病とも呼ばれております。

「原因」
脳内に、βたんぱく(アミロイドβ)やタウたんぱくという異常なたんぱく質が異常に溜まって、脳神経細胞が損傷して死んでしまうことで神経伝達物質が減少します。
まず最初に、記憶を司る海馬という部分から萎縮が始まり、これが要因で徐々に脳全体が萎縮して(縮んで)しまうことで、症状が引き起こされるという説が有力です。

「症状」
主な症状としては、もの忘れが多くなる記憶障害、、時間や場所などの認識が低下する見当識障害、計画を立てたり・計画を実行することが困難になる実行機能障害が発生し、今まで普通に日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。
また、物を盗られたなどの被害妄想や徘徊、興奮や暴力などの症状も出ることがありますが、個人差も大きいので、全ての症状が一律に全員に出るわけではございません。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症の次に多いとされている認知症が「レビー小体型認知症」です。

「原因」
脳の神経細胞の中に「レビー小体」という特殊なたんぱく質の塊があり、そのレビー小体が脳内(大脳)に生じて広がることで脳神経細胞が破壊され、それが要因で発症するのがレビー小体型認知症です。

「症状」
他の認知症と同じように記憶障害や見当識障害、実行機能障害の症状が表れるほかに、主たる症状としては、実際にはいない人や物が見える「幻視」や、自律神経の症状、寝ているときに奇声をあげたり怒鳴ったりする異常行動などの症状が目立ちます。また、手足が震えたり動きが遅くなったりなどパーキンソン症候群の症状がみられることもあります。
血管性認知症
三番目に多い認知症が「血管性認知症」で、男性の発症が多いようです。

「原因」
「脳梗塞(脳の血管が詰まる)」や「脳出血(血管が破れる)」など、脳血管の詰まりや破れなどの脳血管障害が起きると、その障害により脳血管の周りの脳の神経細胞がダメージを受け脳細胞が死滅してしまうことで認知症が発症してしまいます。

「症状」
アルツハイマー型認知症と同じくように記憶障害や見当識障害などがみられますが、脳細胞の損傷によって身体の麻痺や言語障害など神経症状が表れることもあります。
ただし、その症状は、脳の障害の場所や程度によって異なります。
また、感情のコントロールが上手くできなくなるために、抑うつや怒り、投げやりな態度になるといったこともあるようです。

上記の通り、認知症のタイプによって症状も変わってくるので、それぞれに合わせた適切な対応やケアが重要になります。

認知症の検査・診断

認知症の種類の判定やその進行度などを判断するために、医療機関で様々な検査が行います。

認知症の診断は、面談による症状の聞き取りや、一般的な身体検査、神経心理学検査(記憶能力、問題解決能力、注意力、計算力、言語能力などの検査)、脳画像検査(頭部MRI・CT・MRI・SPECT)などで総合的に判断されます。

認知症の検査と診断を受けることは、そこで「終わる」のではなく、そこから「始まる」のです。
もし認知症の症状が出てたとしても、何らかの別の病気などの原因により認知症の症状が出ているだけで、元の病気を治療すると認知症が治ることもあります。
原因である病気を見つけて出来るだけ早く治療を始め認知症を治すためにも、認知症かな?と思ったら、まずは早期に専門医を受診して早期発見を目指しましょう。

認知症の治療方法

現在、ごく一部の例外をのぞき、認知症の進行を完全に止める方法や、根本的な治療方法はございません。

そのため、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の治療は、「薬物療法」やリハビリテーションなどの「非薬物療法」で認知症の進行を遅らせたり、症状を軽くして生活の質を高めることを目的にします
認知症の治療は、残された機能を維持しながら、日常生活の支障となる不安や妄想、不眠などの症状を軽減・改善することが主な目的となります。

治療によりに認知症の進行を遅らせて症状を抑えることで、患者本人が穏やかに生活できることと同時に、介護者の負担軽減にもつながります。

なお、認知症の方は不安になるとさらに症状が悪化してしまいますので、ご家族や介護者はできるだけ本人の感情を安定させておくように努め、認知症特有の行動をしても決して厳しく接することなく、優しく適切な声かけや接し方をするよう心掛けることが必要です。

認知症の治療にとって最も重要なことは、完璧な治療(介護)よりも人間関係を穏やかに保つことです。まずは、認知症という病気(症状)をご家族の方がしっかりと理解し、本人との信頼関係を築くことが一番大切となります。