海洋散骨

「海洋散骨」とは、文字通り、祭祀の目的をもって故人の遺灰やご遺骨を海洋上に散骨する葬送方法の一つです。
船舶でおこなう方法が一般的ですが、ヘリコプターやセスナ機で沖合いまで飛んで行き、空から撒く方法もあるようです。

海洋散骨

近年、「遺されるご家族にお墓のことで負担を掛けたくない」や、「死んだら自然に還りたい」という自然回帰の観点から、海洋散骨という埋葬方法を選ぶ方が増えてきました。

従来、散骨は、死体等遺棄罪(刑法190条)と墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)に抵触すると考えられてきましたが、1998年6月、旧厚生省(現・厚生労働省)が諮問した懇談会での見解で、「(散骨を)希望する者が相当の節度をもって行う場合は、処罰の対象としない」という見解が出ため、これを機に「散骨葬」が新しい葬送法として認知されるようになりました。

しかし、海洋散骨が法律的に問題がないとはいえ、誰でもどこでも散骨が自由にできるということではありません。

海洋散骨を行う際は、一般社団法人日本海洋散骨協会がガイドラインを制定しているので、そのガイドラインを遵守したうえで、環境保全と安全面に留意し、周囲に配慮することを忘れずに行うことが大切です。

【一般社団法人日本海洋散骨協会が制定しているガイドラインの一部抜粋】

  • ご遺骨をご遺骨と分からない程度(1mm〜2mm程度)に粉末化しなければいけません
  • 人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨を行うこと
  • 河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤やその近辺での散骨を行ってはいけません
  • 散骨のために出航した船舶においてのみ散骨を行わなくてはならない
  • 海洋上で散骨を行うに際しては、漁場・養殖場・航路を避けなければいけません。
  • 自然に還らないもの(金属・ビニール・プラスチック・ガラスその他の人工物)を海に撒いてはいけません。
  • 桟橋やマリーナの他の利用者の心情に配慮しなければいけません。(桟橋やマリーナによっては喪服着用の辞退)

海洋散骨の3つのタイプ

なお、海洋散骨を行う際は、主に下記の3つのタイプになります。

個別(チャーター)散骨
一組だけ個別にチャーター船を貸し切り、船長・添乗員と同乗して散骨場所まで行き散骨をする方法です。
個別の貸切りですので、他のご家族に気にすることなく、ゆっくりと故人との最後のお別れをすることができます。
費用の概算:20万円〜40万円程度
合同散骨
2組〜3組のご家族が1つの船に一緒に乗り込んで、船長・添乗員と同乗して、合同で沖合に散骨する方法です。
他のご家族と一緒の乗船となりるため日程調整などが必要になりますが、散骨するタイミングや場所は、グループごとにずらして行うなどの配慮はしていただけます。
乗船する人数が多いため、個別散骨より大き目の船でおこなうことが多いので揺れが少ないという点と、費用の面でも個別散骨より格安でおこなえます。
費用の概算:10万円〜20万円程度
代行・委託散骨
ご遺族は乗船せずに、海洋での散骨を散骨業者に委託する方法です。
委託された散骨業者は、撮影した写真や散骨証明書を散骨後にご遺族に送付します。
個別ごとに船を出して業者が代行で散骨する「個別委託散骨」もおこなっている散骨業者もあるようです。
費用の概算:3.5万円〜10万円程度

海洋散骨を行う際は、自然という共有の財産に散骨するため、守らなければならないルールが存在しますので、専門の知識や散骨の設備(ノウハウ)を持つ海洋散骨の専門業者に依頼することをお勧めします。

なお、海洋散骨でご遺骨を散骨する際は、ご遺骨を全部散骨するのではなく、一部を手元に残しておく(手元供養)される方も多いようです。